井伏氏のお仕事の邪魔にならないやうなら、隣室でも借りて、私も、しばらくそこで仙遊しようと思つてゐた。
井伏は7月末頃より天下茶屋に滞在していた。
御坂峠から見た富士 (軽蔑)• 寝る前に見る富士 (「単一表現」の美しさなのかもしれない)• 財布は路のまんなかに光つてゐた。
結婚に向けて 太宰の結婚の話が進む中、故郷からの資金の援助は受けられないということが分かってきました。
十月の末に、麓の吉田のまちの、遊女の一団体が、御坂峠へ、おそらくは年に一度くらいの開放の日なのであろう、自動車五台に分乗してやって来た。 」友人は、冷淡だつた。 財布を落した。
2」新田には、私の言葉がをかしかつたらしく、聡明に笑つてゐた。
」 娘さんは、うつむいて、くすくす笑って、 「だって、御坂峠にいらっしゃるのですし、富士のことでもお聞きしなければ、わるいと思って。
在るにきまつてゐる。
ロ 富士の俗に媚びない気高さと月見草のささやかな可憐さの対照が心地よく感じられたから。
真ん中に富士があって、その下に河口湖が白く寒々と広がり、近景の山々がその両袖にひっそりうずくまって湖を抱きかかえるようにしている。
脱俗してゐるところがあるよ。
娘さんは、落ちついて、 「それで、おうちでは、反対なのでございませうか。
」とほめてやると、娘さんは得意そうに、 「すばらしいでしょう?」といい言葉使って、「御坂の富士は、これでも、だめ?」としゃがんで言った。 一睡もせず、酒のんだ。 」 「さうですね。
9娘さんは、あんなお嫁さんをもらってはいけないと言いました。
あいつは、すごい。
」母堂は、品よく笑ひながら、「私たちも、ごらんのとほりお金持ではございませぬし、ことごとしい式などは、かへつて当惑するやうなもので、ただ、あなたおひとり、愛情と、職業に対する熱意さへ、お持ちならば、それで私たち、結構でございます。 」 「そうですね。 太宰は同年9月1日、甲府からへ転居。
3「なあんだ。
この女のひとのことも、ついでに頼みます、とまた振り仰いで富士にお願いして置いて、私は子供の手をひき、とっとと、トンネルの中にはいって行った。